トラベルパレット便り(旬の情報♪)

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トラベルパレット桜井の思い

あたためつづけた長年の思いを、あたたかく、時には一緒に泥んこにつかって見守ってくださった起業支援ネットの情報誌「aile」掲載より
(本陣入居が決まった2006年のものです)

大好きな仕事を続けるために起業する!

~転機はチャンス・色とりどりの旅行スタイルの提案を目指して~

「とにかく旅行代理店で働きたくて仕方がなかったんです」と話す桜井のり子さん。物心がついた頃から、旅行業界で働くことを目指していたという。
そんな桜井さんが歩む起業への道。その時々に転機となる出来事があったという。思いがけない転機をステップアップのためのチャンスと捉えて歩んできた桜井さんの道のりを聞いた。

◆ 東京から名古屋へ

大学は観光学科に進学し、仕事といえば旅行代理店で働くことしか考えられなかったという桜井さん。当時まだ女子学生の採用状況は厳しかったが、学生時代からアルバイトをするなどして、大手旅行代理店で働くこととなった。「もうとにかく嬉しくて嬉しくて。当時はバブルの時代で、待っていればお客さんが来てくださるような時代でした。仕事量も膨大で、常に数とスピードが求められて・・・。でも、仕事は厳しくても好きなことだから全然平気でした。」そんな桜井さんの仕事ぶりは、周りからも高い評価を得ていた。
しかし、就職して8年経った頃、結婚、出産という転機が訪れた。「育児休暇をとったらすぐに復帰するつもりでしたが、復帰直前に夫が名古屋に転勤になったんです」。東京生まれ、東京育ちが名古屋へ。これが第一の転機となった。

◆大ショック!旅行の仕事ができない!?

「今までの自分の実績を考えれば、名古屋に来てもすぐに名古屋支店で雇ってもらえると思ってたんです。」しかし、現実は厳しかった。名古屋と東京の客層の違い、子どもがまだ幼いことなどを理由に、名古屋支店での採用は見送られた。しかし旅行業に携わることをあきらめきれずに、忙しい時期にはアルバイトとして手伝いをしたりする中で、次第に人間関係ができてきた。ある日、桜井さんの熱意を知っていた課長が、声をかけてきた。「添乗員を担当する子会社に所長として異動することになった。よかったらそこで働きませんか?」
ここでの経験は大きかったという。「数多くの添乗員さんにお会いして話をしましたが、トップクラスの添乗員さんは人間的にも素晴らしいんですよね。お客さんはそれをよく知っているからそういう人たちのスケジュールはすぐに埋まっていく」。
旅行というものがそういう方々に支えられていることを目の当たりにして、自分自身の力のなさ・勉強不足を痛感したという。

◆起業への決意

その後、訪れた転機は「子どもが小学生になったばかりの頃、夫の会社が倒産してしまったんです」。右肩上がりでどんどん伸びていたはずの会社。当時まだ倒産、リストラといった言葉も一般的ではなく、ショックは大きかった。「会社って絶対のものじゃないんだな、ってそのとき初めて気づきました」。1年間は桜井さんが生活を支えた。そんな中で思ったのは、「どんなことでも人のせいにせず、自分の思ったことを貫ける人生にしたい」。そして思った。今までは会社の方針や体制が整わず、できなかったことがある。「それをやれる旅行会社を自分の手でつくりたい。起業しよう」。

◆足りないものは学ぶ

ウィルあいちでの女性のための起業セミナーを受講し、決意は固まった。その中で、経営資源の棚卸をしてみると、自分には営業の経験がないことに気づく。そこで、通信会社で営業の仕事をしてみることにした。そこで、営業とは関係づくりであることを学ぶ。
その後、そこで出会ったお客さんとのご縁を通して、モデルとなる女性起業家に出会えた。またその時期に、以前勤めていた会社からの依頼で、視覚障害を持った方のアメリカ旅行への添乗を経験した。
「タイミングやご縁って本当に大切だな、としみじみ思います」。
一方で辛い思いをした出会いもあった。「お互いの意思疎通が十分に図れずに、いい関係を築くことができなかったこともありました。でも、今思えば、これから起業していけばいろんな人に出会う。そのときに自分がどんなことに気をつければいいかを教えてくれた経験だと思っています」。
今は、通信の営業の仕事を続けながら「夜11時以降が起業家としての時間です」という桜井さん。同業種・異業種にこだわらず、ネットワークを広げ、信頼できる仲間を増やしながら、一歩ずつ起業の道を歩んでいる。
桜井さんの歩みを見ると、思いがけない転機にめぐり合ったとき、常に「その出来事が自分に何を教えてくれているのか」を考えてきたようだ。そして肩肘はらず、自分に足りないものをどう学ぶか、どうフォローしていくかを考え、行動する。その率直さ、屈託のなさが、次の出会いを生んでいく・・・。
穏やかで柔らかな語り口の奥にある芯の強さと、どんな人からも出来事からも学ぼうとする真摯さ。
「パレットの中で絵の具を混ぜて好きな色をつくるように、一人一人にあった旅行をコーディネートしたい」という願いからつけられた屋号は”トラベルパレット”。
少女の頃から想い続けてきた景色が、桜井さんのキャンパスに間もなく描かれようとしている。